作 :花田 智
演出:高橋彰規
出演:川上琢史、花田智、すずきこーた、木村淳、
深澤幸太、山口浩正、原麻理子、皆川紀子、
鈴木サエ子、八尾光弘、羽鳥友子
村山直子(Player's League)
照明:三田弘明(Light Staff)
舞台美術:ドンガバチョ
チラシイラスト:種滋比古
舞台写真:伊東和則
日程:1999年12月17日(金)〜20日(月)
会場:大塚・萬(YOROZU)スタジオ
地上都市の人々がこの地下に閉じこもったのは50年前、いや70年前、もしかしたら100年前かも知れない。過去の情報はことごとく混乱している。
この街では歴史など幻影の幻影に過ぎないのだ。だから避難した本当の理由についても定かなところは分からない。あるものは地球規模の核汚染だといい、またあるものは正体不明の病原菌(病原体)の蔓延だと主張する。
とにかくその地獄の時、都市は超克したのだ。業火の中で自らを完全に分解し再構築したのだ。
一匹の芋虫が堅い蛹の中で、すべての組織を融かし、再び一頭の町として復活するように・・・
「蝶は芋虫の記憶を持ち得ない」 蛹化での自己分解は当然神経系の解体をも含む。神経細胞で構成された三次元的回路網としての記憶もその構造の消滅とともに失われる。
同様に「再生都市は過去の歴史を持ち得ない」のだろう、きっと・・・
地下都市Junk Metal Cityの内部には巨大な建築物が並んでいる。
緻密に計算され尽くされた機能美を極めた外観を持つ構造体はすべての生命の接触を拒絶しているかのようだ。その神々しいビル群の東側に掃きだめのような地域が存在する。朽ち果てた鉄骨を無造作に溶接したような、または廃材を山のように積んだだけに見える建物が這いつくばるように固まっている。
ここがUnderである。落伍者たちの街だ。
淀んだ闇にしとしとと雨が降り続いている いや、これは雨なんかじゃない。
湿気を孕んだ空気が都市の熱に煽られて膨張し、上昇し、高い天井で結露する。自らの重みを支えきれなくなった水滴は重力の作用に従い次々と落下する。
雨 Underの連中はそう呼んでいる、それも何の感慨もなしに・・・
「Junk Metal Cityの雨は主にUnderに降る」 それは、この地下都市の巨大な天井の計上によるものであろう。
出口のないこの巨大な密室の中、雨はまだ降り続いている・・・
撮影:伊東和則撮影:伊東和則